落雷対策  de JA1XLU
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アンテナメンテナンス

アマチュア無線機器だけでなく、今日の電子機器は多くの半導体が使われており、雷による被害は多くなっている。

かく云う当局では、2000年9月16日にアンテナタワーに落雷があり、タワートップのV/UHF用GPアンテナは影も形も無く消失し、
無線機器とその付属装置は全てが破損し、他にパソコン3台、電話関係機器多数とガスコンベックの電子系等、21品目が壊れた。
破損品目には入れてないが、何も差し込んでいないAC100Vコンセントが1つ爆発した。

しかし、各部屋にあるテレビジョン(7台)は全て正常であり、LANに接続していなかったパソコンも壊れなかった。
そこで、壊れた機器はどうゆう経路で壊れたのか、どうすれば今後の被害を最小にできるかを検証し、対策を講じたので報告する。



当局の破損メカニズム

壊れた機器類と助かった機器とで何が違っていたのか、その接続を検証した結果、明白にアースを取っている機器が壊れ、
アースを取っていない機器は助かっていた。


被害に遭う前は深く考えず、アース端子のある機器は取扱説明書通りにアースを取っていた。後で考えると当たり前であるが、
落雷点近くに取ったアースからは高電圧が上がってきて機器を破壊する。

すなわち、当局のタワー(KT22S)の接地抵抗は約10オームであるが、落雷時に仮に1万アンペアが流れたとすると、タワー及び附近の
地面の電位は10万ボルトになる。 我家の狭い敷地ではどこにアースを取っても、アースからは何万ボルトもの電圧が上がってくる。
一方、商用電源は柱上トランス点など離れた地点で接地されているのでそれほどアース電位は上がらない。
従って、この間の電位差によって機器が破壊される。

これを裏付ける現象として、ACコンセントの爆発があった。当局の作業机は金属アングル製で、静電気対策のためアースを取っていた。
そして作業机の足に問題のACコンセントをネジ止めしていた。落雷によりアースから10万ボルトが上がってきて、ACコンセントの止めネジと
商用電源ライン間でスパークが起こり、コンセントがバラバラになって部屋中に吹っ飛んだものである。
これだけの威力があるので、アースを取った電子機器の半導体が破壊されるのは当然である。

ACは接続されていたが、アースとは無縁であったテレビジョンやパソコンは無事で、保安器でアースされている電話系統、
インターネット接続ルータやパソコンがことごとく壊れたのは当然であった。

注意すべきは、自宅に落雷が無くても近くの電柱に落雷し、商用電源ラインが高電位になった場合、無線機器などアースを
取っていると、自宅のアース電位が低いので同様に破損するはずである。タワーが無く落ちないからから安心とは云えない。


直撃雷と誘導雷

直撃雷とは落雷電流の通路に当たるものを指し、例えば、アンテナケーブルを通じて無線機器を直撃するものである。
一方誘導雷とは雷による強電界や空間電荷の急激な変化で、アンテナや電源ラインに起電力が発生するものと、
落雷による地面の電位が上がり、そんな場所に取ったアース線から上がってくるのも誘導雷という。

前者の誘導雷は、アンテナや電源ラインにアレスタとフィルタを入れることで、かなりの対策効果が期待できるが、
後者のケースではアース線にもフィルタを入れる必要がある。
または、アースを避雷針から100メートル以上離して取れと云われるが通常無理な話である。



対策

前記の経験と検証を踏まえ、当局の雷対策は次のようにした。
1. アースを取らない。またはアースから分離する。
  無線機器は高周波的に浮かすべくトロイダルチョークコイルを介してアースしていた。
  感電対策以外でのアースを取らなければならない必然性は、機器性能上も、インターフェア上にも見出せない。
  そしてタワーに落雷があった場合は、アース線へフィルタを入れたくらいでは被害を避けられないとの見解から、
  今後は徹底的にアースを取らないことにした。

  インターネット関係は回線系がアースされているので、アースを止めることはできない。
  そこで、直接有線接続をせず、無線式のLANルータを用いて各パソコン間をアースから分離することにした。


2. 容易に電源を切り離せるようにする。
  電源ラインは、AC200V, AC100V, DC12Vの各ラインにナイフスイッチを設け、一挙動で主たる無線機とパソコンの
  電源を切り離せるようにした。(ナイフスイッチの耐電圧は10万ボルトには程遠いが、電源が接がっていてもアースを
  取っていない機器は壊れなかったので良しとした)


3. 容易にアンテナケーブルやローテータケーブルを切り離せるようにする。
  アンテナケーブルやローテータケーブル等、タワーから引き込んでいるケーブルは切り離すしかない。
  そこでコネクタを一箇所に集めて 100mm程の間隔を空けて切り離せるようにした。当面はネジを緩めて切り離すが、
  いつかピンジャックのように引っぱれば切り離せるようなコネクタに改造したいと思っている。
  

  これでタワーへの直撃雷があっても全滅にはならず、大部分は助かると思っている。
  ※自宅タワーや近所の避雷針に落雷があった場合は、アンテナを切り離していても、アースを取っていては助からない。


4. 静電気対策は抵抗を介してアースする。
  作業机の静電気対策は、狭い敷地内であるものの、タワーからできるだけ離してアースをとると共に、
  かなりのインピーダンスを持っていても問題ないので、ヒューズ抵抗的に、1/8ワット 100kオームの抵抗を介してアースした。


注意事項

雷の影響は、それぞれの周囲の状況や使用機器によって異なる。主にどうゆうケースからどう防御するかを考えて対策をする
必要がある。
当局でも、無線機やパソコンなど自分自身で使用する機器はアースを止めたが、ガスコンベックや電子レンジ、洗濯機、エアコン、便座等、
家族で使い感電防止が重要な機器のアースを止めたわけではない。各人の責任で対策して下さい

雷鳴時に切離すアンテナコネクタ


線機/パソコン等のAC200V/AC100V/DC12Vラインを集中切断する